パートの中年女性が手短に繰り出す指示に従うが、要領を呑み込むまでが大変だ。単調な作業、立ちっぱなしで息つぐまもなく、数や配送先を間違えないように神経を使う。衛生管理も厳重で、ケースの抗菌シート以外のところに触れたら、使い捨てビニール手袋をすぐ取り替えるように何度も注意された。
3人ひと組で、2時間あまりで何百個作って仕分けしたのかわからないが、その後、おにぎりを1個1個プラスチックのパックに詰めてラベル貼りをした。私は終始、「兄ちゃん」と呼ばれながら指示を受けた。

日雇い派遣を入れる理由が、パートの欠員によるのか、注文が多くて忙しいからなのかわからない。現場でお互いの紹介もなく、右も左もわからぬまま指示に従っているうちに、派遣労働者の立場の曖昧さ、寄る辺なさを感じた。
派遣先の企業は雇用関係のない派遣労働者がどんな人間なのかに関心はなく、必要に応じて「部品」のように使うだけだ。

派遣会社にしても、営業所での様子から、派遣労働者個々人への関心は希薄で、労働力という「商品」のように見なしている印象を受けた。
狭い作業場では、出荷用ケースや炊き上がったご飯入れケースを、はめ込み式台車に2メートルあまりの高さにまで積み上げ、そのつど動かして、いくつも並べる。ご飯入れケースは重さ10キロほどか。荷崩れしたら怖いなと思ったが、あらかじめ注意も受けなかった。機械に手をはさまれないようになどの安全教育もない。派遣先にも労働者派遣法や労働安全衛生法に基づく安全配慮義務があるはずなのだが。

予定通り仕事をした証明として、派遣会社での日当受け取りに必要な管理票に、時間確認とサインをしてもらう。若い女性社員は無表情にペンを走らせた。派遣先で自分はずっと影みたいな存在ではなかったかという奇妙な消耗感を抱いて、私は工場を後にした。
つづく~ (文中敬称略)

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