【アパートより新緑の木立を望む】
(撮影:筆者/テヘラン
大村一朗のテヘランつぶやき日記~テヘラン賃貸事情 2009/05/02
先日、アパートの契約更新をした。
イランではアパートの契約は1年ごとに更新されるため、毎年家賃の値上げに怯えることになる。住宅市場が高騰していれば、極端な値上げを宣告され、より家賃の安い下町へと転居を余儀なくされることもある。
幸いこの1年、テヘランの住宅市場は冷え切っており、家賃の相場は20パーセントほど下がっているとも言われている。インフレの激しいこの国では、ものの値段は上がることはあっても、下がることはないと言われているが、今年の住宅市場の例外だった。
テヘランには、個人で建設業を営んでいる日本帰りのイラン人が多い。彼らは土地を買い、アパートを建てて、それを売る仕事をしているが、この数ヶ月間、ほとんど買い手が着かず、仕事がストップしたままだという話をあちらこちらから耳にしていた。
原因は、住宅購入のための、銀行の個人向け融資が行なわれなくなったことや、テヘラン郊外に安い公共住宅が建設中であることなど、様々な理由が相まって、買い控えの空気が市場を支配しているからだという。
あるいは、土地バブルと言っても過言ではないテヘランで、土地や住宅価格の高騰を一時期抑えるための政府の措置ではないかとも言われている。
ほんの2、3年前までは、まとまった資金があるなら土地を買えとか、自分が数年前に買った土地が今は何倍もの値段に跳ね上がった、などという話をよくタクシーの運転手などから聞かされたものだった。
いずれにせよ、建設業界では、アフマディネジャード政権は完全に悪者扱いである。6月の大統領選挙で彼が再選を果たしたなら、この状況がいつまで続くか分からないと嘆く声も聞かれる。
こうした中、先日、不動産屋を通してアパートの大家さんから得た新家賃の回答は、向こう1年間、今のまま据え置きという、有り難いものだった。
イランでは、賃貸契約に不動産屋を介すのは新規契約時のみで、更新手続きの場合は、たいてい大家と直接契約を取り交わす。外国人の私としては、間に不動産屋が入ってくれた方が何かと安心なのだが、周囲のイラン人に聞いてみると、2回目以降の契約にわざわざ仲介料を払ってまで不動産屋に頼む必要はないと口を揃える。
後日、私は近所にある、大家さんが経営する電気店で、複数の証人の立会いのもと、アパートの更新手続きに臨んだ。昨年不動産屋で作った新規契約証の裏面に、新たな契約期間と家賃などを定めた内容を手書きでしたため、証人数名とともに署名を行い、更新手続きは完了した。
こうして、ここ1ヶ月ほど気にかけていた事柄が、家賃据え置きという理想的な形で無事片付き、業界の方には申し訳ないが、やれやれと胸を撫で下ろしたのだった。