拡大する市場に大統制始まる 7 リュウ・ギョンウォン
国営商業はなぜ失敗するのか
こうして見てきたように、市場を巡って、民衆(家計)と国家の利害が、対立するようになっているのが、昨今の朝鮮の経済構造である。
一方で気になるのは国営商業と国営企業だ。国家の経済機関の市場に対する競争力は実際どの程度なのか、また、民衆の市場活動の自由を抑制することに、どんな意味があるのか。それについて見てみよう。
朝鮮政府が「社会主義制度の優越性」だと喧伝してきた配給制度は、既にすっかり脆弱化してしまっている。
下の写真には沙里院市クチョンの食糧品商店で、一年にわずか数回しかない人民班への「祝日供給」に、住民が押しかけて国営商店は大わらわになっている様子が写し出されている。国営商店の実際の力が、市場のそれとは雲泥の差であることがよくわかる。
■録音取材6
二〇〇八年一〇月中旬、○○道の国営の○○商店に入ったビデオカメラが捉えた販売員と撮影者とのやりとり。撮影者はシム・ウイチョン。
韓国との軽工業原料の交易によって、国営軽工業工場は部分的に操業しており、製品を生産して市場に供給している。商売人も購入者も国産品を好む傾向がある。しかし、国営商業システムは、住民のニーズを満たせず、市場から物を仕入れている有様だ。
記者:へえ、中はすっきりしてきれいなんですね。ここが「○○商店」ですか?
店員:そうです。
記者:ここにある商品は、商業管理所(注1)から持って来るんですか?
店員:いいえ。
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