大村一朗のテヘランつぶやき日記~第10期イラン大統領選挙 投票始まる 2009/06/12
第10期イラン大統領選挙の投票が、12日金曜、全国一斉に始まった。
家の近所を歩いてみると、小学校、モスク、水道局の3箇所で投票所を見かけた。いずれも徒歩10分圏内だ。内務省の発表では、有権者4600万人に対し、約4万5千箇所の投票所が設置されているという。1000人に1箇所という計算になる。
小学校では、広い校庭をぐるりと一周するほどの長い行列が出来ていた。改革派のムーサヴィー候補を支持する友人が言うには、モスクでは投票箱が摩り替えられるから、小学校で投票した方がいいとか、時間がたつとインクが消えるペンが使われている可能性があるから、ペンは持参しろ、などという情報が、SMS(ショートメール)でまことしやかに出回っているという。そのせいかどうかは分からないが、小学校は確かに混んでいる。
投票を終えて出てきた初老の男性。現職のアフマディネジャード候補に投票したという。
「同じギャルムサル出身なんでね」
別の男性は、ムーサヴィー候補に入れたという。
「アフマディネジャードは駄目だ。それ以外なら、祖国を思う人間なら誰でもいい」
モスクの投票所に入ってみる。投票用紙の記入場所には、候補者4名の名前が張り出されている。現職のマフムード・アフマディネジャード大統領、革命防衛隊の元総司令官モフセン・レザーイー、元国会議長で国民信頼党党首メフディー・キャッルービー、イランイラク戦争時代に首相を務めたミールホセイン・ムーサヴィー。このうちの1人の名前を書いて投票するのだ。
投票箱のそばでは、司法府、護憲評議会、各候補者の選挙本部のそれぞれから派遣された監視員が控えている。
たくさん来ていますか?と護憲評議会の監視員に聞くと、朝からすでにたくさんの人が来ているよと教えてくれる。
実際、前回、2005年の大統領選挙のときには、午前中の投票所などは閑散としたものだった。日が暮れて涼しくなる頃、つまり投票終了予定時刻の夕方6時を過ぎてから、人々は夕涼みがてら投票に出かけ、終了時間は1時間また1時間と延長され、結局、投票は夜中の11時まで行なわれていた。
それが今回は午前中から長蛇の列だ。投票率がどこまで伸びるのか楽しみである。
選挙は、実質、アフマディネジャード候補とムーサヴィー候補の保革一騎打ちと言われている。いずれの候補もこの投票では過半数の票を獲得できず、来週の決戦投票にもつれ込むだろうというのが大方の予想だ。そうなると当然、無関心層や浮動票は、現職ではなく、自由と変化を求める改革派候補に流れることになるだろう。
明日の午前中には開票結果が出されるもようだ。