三代世襲は困難 「後継問題」に直面する北朝鮮政権 6
リュウ・ギョンウォン
ポスト金正日体制が直面する五つの衝撃
望むと望まざるとにかかわらず、朝鮮はいずれ改革開放の道へ進むしかない。現行の制度と統治方式の改革を拒み続け、対外開放に踏み切らず国際的な孤立から抜け出せなければ、独裁政権といえども体制を維持していくことはできない。
それなのに現政権は、市場経済を取り入れていくよりも、市場を抑制・統制する措置を重ねて、人民生活を圧迫する方向にまっすぐに突き進んでいる。それは、改革開放によってある程度不可避的に生ずる体制へのショックから逃げているためである。
このように人民を苦しめ、抑圧し、強奪する政権が「社会主義」朝鮮から出てくるとは、誰も想像しえなかったことだろう。
このような改革開放に背を向け続ける反人民的な政権であっても、目の前にはどうにも逃げ隠れできない衝撃が待っている。ポスト金正日体制がそれに耐えられるだろうか。
■衝撃1 「戦前世代」の退場
朝鮮戦争後の社会主義制度の樹立から現在まで、朝鮮社会を動かしてきた主力は、なんといっても朝鮮戦争前に生まれた世代であった。
二〇一〇年には、最後の戦前世代が六〇歳になり定年退職することで、全ての社会の一線から退くことになる。
朝鮮の「階級闘争」の中心勢力であるこれら古い世代の退場と共に、彼らが作り伝えてきた社会的な価値も火が消えることになる。「継続革命、集団主義、組織生活、思想闘争、戦争準備などの大義名分のために、自身の夢や青春を捧げ、親兄弟、家族までをも犠牲にせよ」という教育と宣伝は、もはや戦争を知らずに市場にもまれた「戦後世代」には通じなくなっている。
今、朝鮮では若者への教育事業に特に力を注いでいる。朝鮮の保守的な政治は、「戦前世代」の退場によって新しい時代が到来するのを恐れて、若者に懸命に継続革命の教育をしているのだが、嫌がる相手をしつこく追い掛け回していても大した効果はない。
朝鮮戦争を知らない世代が、確実に社会の中心勢力になっていく。世代交代の衝撃は避けられないのである。
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