三代世襲は困難 「後継問題」に直面する北朝鮮政権 1
リュウ・ギョンウォン
金正日に「異変発生」の報せが駆け巡って、朝鮮の行方について世界中が大きな関心を示している。その中でも、とりわけ注目されているのが、「ポスト金正日体制はどうなるのか」である。
韓国や日本のメディアでは、それが金正日に三人いるとされる息子のうちの誰が《王位》を継承するのかという「世継ぎ物語」に矮小化されてこの問題が語られているが、それは至極残念なことだ。
金正日が金日成から最高権力者の地位を継いだのは確かだが、だからと言って三代にわたって世襲が行われることを当然のこととして、「ポスト金正日体制」を論じるのは、時代と社会と国際環境の変化を無視した乱暴な議論だと言わざるを得ないからだ。
金正日の後継者となることは、現在の朝鮮が置かれているきわめて困難な事態を引き受けていくということであり、発生するであろう様々な混乱の大波の中に、あえて小舟で乗り出すようなものなのである。
金正日の地位を継承することが、どれだけ多くの困難に直面することにつながるのかについて、今の朝鮮政権をとりまく環境――経済、外交、思想、国民の意識などから検討してみたい。
浮かび上がってくるのは、三代にわたる世襲は困難だという結論である。
権力後継が困難な八つの理由
[1]特権機関によって分断された経済
建国後の歴史を振り返ると、朝鮮は二度廃墟になったといえる。
一度目は、もちろん朝鮮戦争。しかしこの時は、まだ社会主義兄弟国からの強力な援助があった。
だが、朝鮮戦争よりも激しく破壊された一九九〇年代後半の大混乱の時期、改革開放の隊列から離脱・孤立した朝鮮には、兄弟国など存在しなかった。
この時期の経済破綻は、中国やロシアと疎遠になったことや自然災害による部分もないわけではなかったが、ずっと重大な国内の要因が存在したのである。すなわち、特権機関による国家経済の分断の影響だ。
一九七〇縲恃ェ〇年代の二〇年におよぶ期間、金日成首領とその後継者の共存は経済面でも「船頭多くして、船、山に登る」結果を招いたが、その最も大きな影響は、特権機関が計画経済を侵食することで発生した国家経済の分断だった。一九九〇年代の経済難の主犯がこの経済分断だということは、朝鮮人なら誰でも理解できるはずである。
この時期、人民の中でもとりわけ政権に忠実だった「核心階級」は、金日成が内閣首相となって一九五〇年代の朝鮮戦争後の経済復旧を成功へと導いたように、最高権力者の金正日が内閣首相となって行政面でリーダーシップを発揮できなければ、混乱からの復旧と危機の打開は困難であると見ていた。
しかし金正日は、ずたずたになった経済をそのまま放置し、人民を捨て軍部だけを抱え込むという選択をした。
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