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【米兵犯罪裁判権をめぐる日米密約を裏付ける「検察資料」(『合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料』)の一部。法務省によって黒塗り処理がされている】
国家が情報を隠蔽するとき

最近、米軍の核兵器持ち込みをめぐる日米間の「密約文書があった」という、元外務省事務次官の証言が報じられている。
その密約とは、核兵器を積んだ米軍艦船の日本寄港や領海通過、同様の米軍航空機の一時飛来が、日米の事前協議なしにできるとする秘密合意である。それはすでに、米政府解禁秘密文書でも明らかになっていた。

しかし、日本政府はいまも密約の存在を否定し続けている。国家の秘密主義と情報隠蔽の体質は根深い。
同じように、日本における米兵犯罪の裁判権をめぐる日米密約の存在も、政府は秘密にし続けている。
「(日本の当局は)日本にとっていちじるしく重要と考えられる事件以外については第1次裁判権を行使するつもりがない」という密約が、米政府解禁秘密文書で明らかになったにもかかわらず。

その密約の存在を裏付ける内容の「検察資料」が、国立国会図書館に所蔵されている。ところが昨年、法務省が国会図書館に対して、同資料の非公開を要請するという一種の圧力をかけ、同資料は閲覧禁止になった。

その後、法務省が黒塗り処理をして一部閲覧可能となったが、政府の情報隠蔽の方針に変わりはない。
このような国家の秘密主義と情報隠蔽は、主権在民の原理に反し、国民・市民の「知る権利」を侵害する。時には、人権と生命を侵すことにもつながる。
連載では、まず、米兵犯罪裁判権をめぐる日米密約の闇に目を凝らす。密約の存在に憤る米兵犯罪被害者の声にも耳を傾ける。

米兵犯罪が繰り返される背景には、この密約がある。事は被害者の命と人権、「知る権利」、刑事裁判権の行使という主権の根幹にも関わる重大な問題である。
また、自衛隊のイラクやインド洋など海外派遣にともなう装備修理・輸送などに、企業がどのように関わっているのか、事実上の民間動員システムがどのように築かれつつあるのか、秘密のベールに覆われた実態に迫る。

さらに、事実上の戦地派遣だった、イラク派遣自衛隊員の「復興支援活動帰国後のストレスに関する調査」「派遣要員ストレス状況調査結果」が秘密にされている問題も取り上げる。黒塗りにされたその調査結果報告書からは、派遣隊員のトラウマ体験の事実がうかがえる。
そこに、戦争のできる国に変わりつつある日本の行く手を暗示する影が隠されてはいないだろうか。
そのほかに、米軍原子力潜水艦の放射能漏れに関する情報隠蔽の問題などにも目を向ける。
つづく(文中敬称略)

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【イラク派遣自衛隊員の「復興支援活動帰国後のストレスに関する調査」の、「トラウマ体験の内容」ページ。防衛省・自衛隊によって黒塗り処理がされている】

【連載】 国家が情報隠蔽をするとき
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