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国家が情報を隠蔽するとき

1 国会図書館と「真理がわれらを自由にする」

東京都千代田区永田町、国会議事堂のそばに国立国会図書館がある。図書、雑誌、新聞、地図など蔵書数は日本最大の約3500万点に上る。
入館資格は満18歳以上で、国会図書館の「現況統計」(2007年度)によると、年間入館者数は43万2431人(1日平均1544人)、出納資料数が238万9514点である。さらに、「国会に対するサービス」として、調査・レファレンス回答4万9813件、貸出資料数3万1352点が挙げられている。
国会図書館のホームページには、国会図書館の存在意義がこう書かれている。
「民主主義は、ひとり国会議員が情報を持つことにより実現するわけではありません。国民が情報を持つこともまた民主主義の不可欠の要素です。このため、国立国会図書館は『真理がわれらを自由にする』の理念の下、国会に奉仕するとともに、国民の情報ニーズにも応える機関として位置づけられています」
「国立国会図書館は、納本制度により、日本の官庁出版物、民間出版物を網羅的に収集しています。これらの収集資料は、国会議員のための立法補佐業務の基盤となると同時に、蓄積保存され、現在及び将来の国民の利用に供されます」
この「真理がわれらを自由にする」という国会図書館の基本理念は、1948(昭和23)年制定の国立国会図書館法の前文に謳われている。
「国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立って、憲法の誓約する日本の民主化と世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される」
かつて大日本帝国時代、政府が強大な官僚組織の秘密主義により情報を独占し、専制と戦争の惨禍をもたらした。その歴史を繰り返さないために、戦後、日本国憲法施行の翌年、1948年に国会図書館は発足したのである。

国会図書館の創設に大きな役割を果たしたのが、歴史学者の羽仁五郎(1901―1983年)だ。『ミケルアンヂェロ』『明治維新史研究』『都市の論理』などの著作で知られる羽仁は、戦前、「日本資本主義発達史講座」の編集に参加し、マルクス主義歴史理論に基づく明治維新史研究を確立した。軍国主義・ファシズムに反対の立場をとり、治安維持法違反容疑で二度投獄された。特高警察による拷問も受けている。

戦後、羽仁は参議院議員(無所属)を務め(1947~56年)、参議院図書館運営委員長として国立国会図書館法案の起草に参画した。
国会図書館のホームページにも、「従来の政治が真理に基づかなかった結果、悲惨な状況に至った。日本国憲法の下で国会が国民の安全と幸福のため任務を果たしていくためには調査機関を完備しなければならない」という、当時の羽仁の発言が載っている。
「真理がわれらを自由にする」という言葉は、羽仁が戦前、ドイツ留学中に見た大学図書館の銘文に由来する。そして、それは元々、新約聖書の「真理はあなたたちを自由にする」という言葉から来ているといわれる。
つづく(文中敬称略)
【連載】 国家が情報隠蔽をするとき
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