5 密約はいまも活きている
そして情報開示された文書は、法務省刑事局長から国会図書館収集書誌部長に宛てたもので、日付けは平成20年5月27日であった。
最初に、「資料の利用制限の申出について」とあり、『合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判権関係実務資料』の「国立国会図書館における利用の禁止及び国立国会図書館蔵書検索・申込システムにおける書誌データの非公開措置を採っていただきたく、お願いいたします」と書かれている。
利用禁止によって閲覧をできなくするだけではなく、書誌データの非公開すなわち削除をも求める文面からは、『実務資料』の存在さえも隠したいという意図が伝わってくる。
続いて、「申出の趣旨・理由」が次のように述べられている。
「表紙部分に『秘』表記があることからも明らかなとおり、秘密扱いとされている資料であり、本件資料には、アメリカ合衆国の軍隊構成員等の犯した罪についての捜査、公訴の維持及び刑の執行に関連する記述があり、公にすることにより公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがあること(行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第4号)」
「アメリカ合衆国との間の協議の内容等に関する記載があり、公にすることにより他国との信頼関係が損なわれるおそれがあること(行政機関の保有する情報の公開に関する法律第5条第3号)」
「秘密扱いとされている本件資料が国立国会図書館に存在することが明らかになれば、我が国の秘密文書の取扱いに対するアメリカ合衆国の信頼を損ねることとなり、その存在を明らかにするだけで、他国との信頼関係が損なわれるおそれが生ずることとなる(行政機関の保有する情報の公開に関する法律第8条、第5条第3号)」
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