筆者の質問に答える北朝鮮人男性Bさん(写真手前)
筆者の質問に答える北朝鮮人男性Bさん(写真手前)

今後正雲氏が実際に後継者になるかどうかはともかく、世襲後継の動きについては、皆が否定的ないしは無関心な態度を示したのも興味深かった。
「生きていくのが大変だから誰が後継者になろうがどうでもいいと思う。でも混乱した人民生活を解決できていないのに息子が後継者になるのを、人民は嫌だと考えるでしょう。

金正日将軍が死んだら、朝鮮も大きく変わることでしょう。改革開放して米国でも日本でもどこにでも働きにいけるようになったらいいのに」
(清津市40代男性機械工、Bさん)

「人民の90%は変化を望んでいる。ずっと奴隷のように暮らしてきて、それがこれからも代々受け継がれていくのかと人々は不満を口にするようになりました。
最近になってやたらと後継者問題のことを言うようになりましたが、後継者争いの先頭に末息子(正雲のこと)が出てくるなら、朝鮮はもっと悪くなるのではないでしょうか」
(咸鏡南道40代の女性医師、Cさん)

「貧しい庶民は犬や豚よりひどい暮らしをしている。なんとかましになって欲しいけれど、後継者は(金正日と)同じ政治をするつもりでしょう。
私はそんなことは望みませんが、どこにも訴えることもできない。今みたいな政治が続くことを誰も望みません。

少しでも開放してくれたら朝鮮人はすぐにやっていけるようになれます。なのに、どうして扉を閉ざして開こうとしないんでしょう。自国の国民の暮らしがよくなることはいいことではありませんか。
今年になって生活が本当に苦しくなったので、人々の怨嗟の声が高くなっています」
(清津市23才の女性、Dさん)

金日成主席死亡後の15年の金正日時代は「失敗した15年」だというのが、北朝鮮国民のコンセンサスだと言っていい。大量の餓死者まで発生させ、今なお改革開放に踏み切れないまま生活がどんどん悪くなっているからだ。

「金正雲後継」というのは、そんな「失敗した15年」が継続することを意味すると、北朝鮮の住民の多くは後継問題を捉えているのではないだろうか。
後継者問題が慌しい動きを見せているが、いくらスーパー独裁の北朝鮮といえども、新しい指導者の登場に国民が納得しない限り、政権運営は混乱必至だと筆者は見る。
注目すべきは北朝鮮の「世論」である。
(つづく)

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