労働鍛練隊
教化所については今後掲載するインタビューで詳細に語られるので、ここでは労働鍛錬隊について簡単に解説しておく。
労働鍛錬隊は保安省の管轄で、裁判なしに拘禁して強制労働させる短期の勾留施設だ。
通常勾留期間は六ヶ月未満である。

収容されるのは、中国への逃亡者をはじめ、職場に出勤しない者、職場や地域の思想学習や集会などをサボり続けた者など、北朝鮮の社会風紀を乱したとみなされた人たちだ。
労働鍛練隊では、運動場を走らされたり、金日成・金正日の「お言葉」の学習や、父子を称える歌を歌わされたりという課業がある。
日中は管轄する保安署の畑を耕したり、建設現場に送られるなどの労働を強いられる。

労働鍛練隊の収容者たちは、保安署にとって無償で好きに使える労働力だ。保安署の金儲けのために外部に「貸出し」したり、幹部たちが個人の用事に使ったりということが横行している。
労働鍛錬隊の内部の環境は、とても劣悪だという。

特に社会混乱が続いていた二〇〇〇年頃までは、一般社会でもまともに食べられる状況ではなかったため、収容者には粗末な食事しか与えられず、ほとんどの人が栄養失調になったという。
「一日にトウモロコシ数さじ程度しか与えられなかった」という証言は、九〇年代に労働鍛練隊を経験した人にほぼ共通している。
また、衛生面もひどい有様だったという。
中国から逮捕・送還される者が多かった時期には、一部屋に多人数が詰め込まれたのだが、水の使用が制限され、歯磨きも手洗いや洗面もままならなかったらしい。

南京虫やシラミはうじゃうじゃいる。病気になって命を落とす人も珍しくなかったという。
労働鍛練隊では古株の収監者を「班長」にして収容者を管理させるのだが、この「班長」を使った暴力支配も酷かったと、多くの体験者が証言している。
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