インタビュー:強制送還された脱北女性の証言1
聞き手 石丸次郎
北朝鮮に送還された脱北難民の処遇には一貫性があるわけではなく、時とともに、また国際社会の関心の度合いによっても変化してきた。
処罰は緩められたり厳しくなったりを繰り返し、現在はこの一〇年で最も厳しい状態で《高止まり》しているようだ。
脱北―逮捕・送還―再脱北を繰り返して《悪質》とみなされた者の多くは、平安南道にある甑山(ジュンサン)教化所に収監される。この甑山教化所は過酷な取り扱いで悪名高いのだが、その実態の詳細はこれまで明らかではなかった。
この甑山教化所に収監され約二年を過ごした女性三人の証言を紹介する。
中国から逮捕・送還され甑山教化所に送られるまで、どのような手続きを踏み、どんな取り扱いを受けるのか、そして、収監者が甑山教化所の内部でどのような取扱いを受けているのか。
◆〈インタビュー 1〉Aさん (1)
二〇〇八年九月に石丸次郎が中国吉林省で取材した三〇代の女性。咸鏡北道○○郡出身。
一九九七年に中国に脱出し、中国朝鮮族の男性と「結婚」、一男をもうける。
二〇〇〇年と二〇〇三年に中国警察に逮捕され北朝鮮に送還されるも、労働鍛錬隊での短期強制労働を経て釈放され、その度に中国に逃亡。
二〇〇六年に三度目の逮捕送還によって裁判に付され甑山教化所に収監される。
未決収監期等との合計二年の服役の後釈放され、ひと月もたたないうちに中国に四度目の脱出をした。
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