北朝鮮難民の存在に、国際社会がようやく注目したのは、二〇〇一年以降、北京や瀋陽の外国公館に亡命を求めて駆け込む事件が続発してからだった。
中国で逮捕された脱北難民は、警察あるいは辺境防衛部隊(国境警備隊)の拘置施設で取調べを受ける。
まず身体捜索をして一切の個人の持ち物はいったん没収(原則として送還時に返却される)、ベルト、靴の紐は自殺防止のために取り上げられる。調査は名前、生年月日から始まって中国にきた目的、経歴、家庭環境、渡河地点など簡単なものだ。
調査後、刑事犯罪と無関係な者は、国境警備隊の拘置施設で三日縲恣T間ほど留め置かれた後、北朝鮮に強制送還される。留め置かれるのは、捕まってくる難民たちをまとめて一度に強制送還するためだ。
逮捕された難民の数が三、四〇人ほどになると、バスや幌付き軍用トラックの荷台に乗せて国境に送る。北朝鮮には、逮捕地に近い地域の国境橋を通じて身柄が移管される。現在は中国側の南坪、三合、図們、琿春、長白、丹東などおよそ一〇ヶ所である。
強制送還されると過酷な処罰を受けることを、脱北難民たちは誰よりも知っているため、中国で逮捕されると、絶望のあまりに自殺を試みる人もいる。
二〇〇四年秋に、筆者の知り合いの延吉市の中国朝鮮族が保護していた難民の男性が、隠れ住んでいたアパートを警察に急襲された。彼は逮捕に絶望して、隙を見てその部屋のあった五階から身を投げて死んだ。
中国当局に抵抗を試みるケースもある。
二〇〇〇年四月には、図們市の国境警備隊の拘置所に収監されていた北朝鮮難民数十人が、「北朝鮮送還阻止」を叫んで暴動を起こした事件があった。
事件直後に国境警備隊員から話を聞かせてもらったが、難民たちは拘置所内の備品を破壊、国境警備隊員を人質にとって乱闘を繰り広げた。結局鎮圧のために大規模な応援部隊が投入され、全員が北朝鮮に送還されてしまったという。
(つづく)
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