ysd_img433.jpgイージス護衛艦「きりしま」の修理を企業に指示する海上自衛隊の仕様書。実施場所が黒塗り不開示にされている。企業名の記載はない。

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実施場所を秘匿している理由を、防衛省は次のように説明する。
「これを公にした場合、テロ対策特別措置法に基づく自衛隊艦船の行動が推察され、海上自衛隊の任務の効果的な遂行に支障を及ぼすおそれがある」

企業名を公表しないのは、「当該企業を標的にしたテロなど違法な妨害活動が行なわれ、公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」からだという。

仮に現地で事故が起きたり、テロなどの事件に巻き込まれた場合の対応や補償に関しては、「企業が契約して行なっていることであり、事故や事件に関しては一般的に企業内の労使関係で処理すべき問題」だという見解を、防衛省は述べている。

つまり、防衛省・自衛隊が責任をとったり、補償したりする考えはないということだ。それはイラク関連の技術者派遣についても同様である。
しかし、確実な利益が得られる自衛隊装備の生産・修理・整備などを受注している防衛産業(軍需産業)の企業にとって、一大顧客である防衛省・自衛隊からの契約要請を断るのは難しい。契約を通じてであれ、政府が民間に協力をさせる、事実上の「民間人動員」と言ってもいい。

イラクに派遣された航空自衛隊は、戦闘に従事する武装した米兵を運んでいた。インド洋で海上自衛隊が給油した米軍艦のなかには、アフガニスタン空爆やイラク戦争に参加した艦船も含まれている。輸送や補給は軍事用語では兵站といい、戦闘を支援する活動そのものであり、戦争協力にあたる。

海外でそのような戦時の米軍支援をおこなう自衛隊への、企業によるサポート態勢ができている。それらの企業で働く労働者は仕事を通じて、企業内の業務命令を通じて、否応なく米軍への戦争協力の一環に組み込まれざるをえない。本人がそれを意識するしないとは別に、政治・軍事・経済の大きな構造の問題がそこにはある。事実上の「動員システム」が密かに築かれつつある。

(つづく)
*この問題について、緊急報告集会「拡大する民間人の戦地派遣」(主催:重工産業労働組合、造船重機連絡会)が、8月8日(土)午後1時30分~4時30分、東京都のJR水道橋駅・都営地下鉄三田線水道橋駅そばの全水道会館4Fホールで開かれる。会場費・資料代1000円。
そこで、筆者は詳しい報告をする。
問い合わせ先は、重工産業労働組合(Tel.042-451-0472)

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