国際的に物議を醸している人権蹂躙批判も問題だが、「渡江者」を強制的に送還すればするほど、「渡江者」をさらに中国国内の闇社会へと追いやるだけの結果をもたらすのである。
反対に、全ての「渡江者」を登録して滞在を許可・保護すれば、中国の脱北者社会はおのずと透明化し健全化する。そのほうが中国にとっても望ましいはずである。
中国の脱北者に関わる社会問題は、朝鮮当局の無理な処罰によって軽減されるようなものでは決してないことを知るべきである。
国際社会は、「渡江者」問題が、朝鮮政府に対する経済支援によって解決に向かうというような、消極的で的外れな考えから脱却し、北と南、それに中国、ロシアなどが協力して、朝鮮の剰余労働力を活用するといった積極的な施策を研究する必要がある。
(おわり)
注1 二〇〇二年七月一日に発表された新経済政策。正確には「七・一経済管理改善措置」。
社会主義原則を守りながら、環境の変化に合わせて最大の実利を図る、として大々的に導入された。「1.形式にすぎず実態を反映していなかった規定賃金、公定物価を実勢レベルに一律に引き上げる。2.企業の裁量権を拡大し自立経営を促す。3.拡大し続けていた闇市場を閉鎖する。4.人民消費物資を、再び国家による供給体系に戻す」などを断行しようとした。
企業に採算性を求めるなど、一部に改革的性格は見られたが、国家計画経済体制を根本的に改めるわけでなく、食糧や消費物資を供給できる見込みのないまま、闇市場を強制閉鎖したことから、ハイパーインフレを発生させるなど大混乱を招いて失敗に終わった。
当局は事態収拾とのため、翌年四月に闇市場を公認して総合市場に再編した。
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