解説2:生き延びるための脱北が「反逆」とは(下) リャン・ギソク
「渡江者」の分類
「渡江者」はいくつかのタイプに分けることができる。
一番多いのは、朝鮮で生きていくことができずに中国に渡った人たちや、生活のための商売(密輸等)をする上で中国と関係のある人たちで、全体の六〇縲恷オ〇%を占める。
次に多いのが、豆満江両岸の住民の間で伝統的に存在していた、中国人男性との結婚を目的とする女性「渡江者」たちである。
そのほとんどが、国際結婚斡旋業者の案内で渡江しており、中には、問題となっている人身売買ブローカーの詐欺的な斡旋によるケースも時折みられる。
そして次に、少数ではあるが、身寄りのない老人や子供たちだ。
その他、統計的にはほとんど現れないほどごく一部ではあるが、朝鮮国内で民法上または刑法上の罪を犯し逃亡する者や、いわゆる「政治的迫害」を逃れて国境を越える者もいる。
朝鮮当局が主張するように、民族反逆者が存在するとすれば、それは全「渡江者」のうち極少数に過ぎない「犯罪者」たちである。
勿論、「犯罪者」の定義自体、人権と公正さ、透明性が保障されたものでなければならないことは言うまでもない。
ところが、現実にはこの極めて少数の「犯罪」的性格を持つ者を、無責任にも大多数であると故意に拡大して一律的に処罰しているのである。これは国家的な人権蹂躙以外の何ものでもない。
そもそもこうした大多数の「渡江者」たちが、どういう経緯で渡江しなければならなかったのか、そして、このような渡江の原因を作った張本人は誰なのかといった問題を考えてみると、朝鮮での人権弾圧は許しがたいものであることが見えてくる。
では、「渡江者」の中で最も多くを占める、上述の第一、第二のタイプの発生原因と問題点について考えてみよう。
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