ところが本当は、軍事的な考慮すなわち軍事機密や軍事作戦などの必要上、その存在を公表しなくてもいい場合もあるとして、例外を認めているのである。それは、必要に応じて秘密基地の存在も容認することを意味する。
この解説の根拠は、問題の「日米合同委員会刑事裁判管轄権分科委員会において合意された事項」の第8項「施設又は区域の標示」にある。
「行政協定第2条に基づき合衆国軍隊が使用する施設又は区域で許可なき立入が禁止されている地域の境界は、日英両国語をもって左記の趣旨を記載した標識又は標示によって明確にされるべきものとする。
『合衆国区域(施設)
在日合衆国軍隊
許可なき立入は日本国の法令により処罰される。』
区域又は施設の一覧表及び法律上の記述は日本国の官報及び合衆国軍隊の公刊物に公表する。但し、その軍事的性質により、特定の施設又は区域は公表する一覧表に含めない」(『実務資料』p.128 ~129 )
法務省と外務省により黒塗り処理された『実務資料』複製では、「合意事項」全文が削除されているため、解説と「合意事項」のつながりはわからない。
外務省すなわち日本政府が、外務省のホームページで公表している、「刑事裁判管轄権に関する事項」では、この第8項は、「第5.施設又は区域の標示等に関する事項」として記載されている。しかし、上記の下線部分はすっぽりと抜け落ちている。削除されている。
そのかわりに、「区域又は施設の一覧表及び法律上の記述は出来る限り日本国の官報及び合衆国軍隊の公刊物に公表する」と書かれている。
これは正式な日米間の「合意事項」全文から重要な部分を欠落させたうえで、意図的に書き替えたものである。本当は「一覧表に含めない」と断言されているのに、「出来る限り公表する」と表現をぼかして、米軍優位の事実を曖昧にしておこうとしている。まさに情報隠蔽である。
つづく(文中敬称略)
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