大村一朗のテヘランつぶやき日記~新ウラン濃縮施設の公表(1) 2009/09/30
イランの核問題がよく分からないことになっている。
10月1日から国連安保理常任理事国とドイツ(5+1)とイランとの核協議が始まる。そのわずか5日前の9月25日、イラン政府は国内2つ目のウラン濃縮施設を建設途中であると発表した。場所はテヘランの南およそ100キロ、宗教都市ゴムの近郊の地下だ。
この発表を受け、アメリカ、イギリス、フランスは激怒し、これまでイランとの経済的繋がりからイランへの制裁強化に常に反対の立場を取ってきた中露も、米英仏に同調する構えを見せている。
5+1にとって、10月1日から始まる協議の目的は、なんとかしてイランのウラン濃縮活動を停止させることにある。そんな矢先に、数年に渡って地中深くに着々と2つ目の濃縮施設を作っていたとあっては、5+1が憤慨するのも無理はない。
一方、イラン政府は、「施設は合法的、平和的なもの」と悪びれる様子もない。
イラン政府によれば、核施設を建設するのはすべての国の権利であり、IAEA国際原子力機関の規定では、施設稼動の半年前にIAEAに通知すれば良いことになっている。しかし、この施設の稼動までにはまだ1年半は時間がかかり、イランは自らの義務の枠を超え、規定より1年も早くIAEAに通知した。これに関してはIAEAから感謝の言葉が送られており、欧米諸国にとやかく言われるのは心外である、ということらしい。
確かに、イラン核問題では、これまでイランに分があった。欧米イスラエルがどれほどイランの核兵器製造疑惑を声高に叫ぼうが、その証拠は何一つ見つかっていないとIAEAがこれまで繰り返し表明してきた。平和目的の核活動はIAEAに加盟するすべての国の権利であるというイランの主張は、国際社会でも一定の支持を受けてきた。
今回、イランがこの新たな濃縮施設を平和目的の産業用の施設であり、申告も期日より早く、今後もIAEAからの完全な査察を受けると言っている以上、そこに付け入る隙は何もないように思える。
なるほど、核問題の権威であるIAEAがイランからの早期申告を評価しているというのであれば、欧米の憤慨は的外れなものと言わなければならない。
しかし、ウラン濃縮施設を建設するには普通、何年もかかる。稼動の半年前と言えば、もうほとんど完成間近の状態に等しく、その段階でIAEAに申告すれば良いという主張は、普通に考えればおかしい。
そして、今日目にしたAP通信の報道では、IAEAが、本来は施設の建設を始める段階でIAEAに申告しなければならない、とイランの主張に反論しているという。
そこで、IAEAの規約に一通り目を通して見たが、核施設の申告時期を定める項目は見当たらない。IAEAのホームページには、まだイランの新核施設に関するコメントは掲載されていない。
先日、イランの国営テレビの番組の中で、イラン原子力庁長官が、イランが早期にこの施設の存在をIAEAに申告したことについて、IAEAから届いたという感謝の書簡を読み上げる場面があった。あれは一体何だったのだろう。(つづく)