「成功。助かった」
墓から出て、青磁をそうっと触ってみるとつるつるしていた。
弱い月明かりに照らしてみた瞬間、ぼくは驚きのあまり青磁を放り投げてしまった。それはドクロであった。
しかしぼくはその失敗にへこたれず、再び棺の中に入った。

肋骨、骨盤、向こうずねの骨......。
手に触れるだけで滑るし冷たかった。ひょっとしたら金の指輪でもあるかもしれないと、指の骨まで探ってみたが、何もなかった。すべてが無駄骨だった。
「兄さん、何もないよ」
あーこれで終わりだ。これからはぼくらはどうやって生きていけばいいんだろう。いっそぼくもこの骸骨のかたわらで横たわってしまおう...、そう思い目を閉じた。

墓の上では、がっかりした兄さんがわんわん泣いている。
「キルス、何もないんだったら早く出てこいよ」
ぼくには返事ができなかった。

「キルス、お前が出てきたくないんなら、いっそおれもいっしょに死ぬよ」
兄さんの悲壮な声でぼくは我に返った。[犬死なんかできない。生きなければ]そう思い直した。
「ぼくたち、死んではいけない。生きのびなきゃ。いい日が来るよ」
ぼくたち兄弟は重い足取りでとぼとぼ山を下りていった。

ああ、北朝鮮の山野で眠っているご先祖様。この地に吹き寄せる飢餓の嵐のせいで、死んでもご先祖様は安らかに眠れませんね。

<<<連載・第9回   記事一覧   連載・第11回>>>

おすすめ<北朝鮮> 写真特集・無料動画… 

★新着記事