リヤカー 学校に行かず、お父さんと一緒にリヤカーを引いて歩き商売に出ます。 ―ファヨン(キルスの従姉妹)
リヤカー
学校に行かず、お父さんと一緒にリヤカーを引いて歩き商売に出ます。―ファヨン(キルスの従姉妹)

 

血の涙の中学校時代

家の状況がきびしい中でも私は中学校に上がった。食べ物がなく学校に行けない日でも、先生たちは友だちを家に送ってよこした。そして学校に連れて行かれて殴られた。殴られた学生たちはどれほどやるせなかったことだろうか?

先生たちもお金がある幹部の家の子たちだけをかわいがった。勉強がいくらできても貧乏な子はいじめて、勉強ができなくてもいい暮らしの子たちには優しかった。熱誠者学生幹部(学級委員)にも、いい暮らしの家の子どもたちがなった。

実際のところ、学校に行って何をするのだ? 教科書もない。ノートも鉛筆もないのに、どんな勉強も頭に入るはずがない。
また勉強がよくできても、先生たちに袖の下を何もわたせなかったら、成績証明書は「普通」になってしまい、賄賂を渡せば「最優等」であった。
私の学校の数学の先生のことだ。その先生は私の家のそばを通り過ぎるたびにいつも、「ファヨンの家からは天ぷらのにおいがする」と言っていた。ある日、私は数学の時間に遅刻してしまった。

「家に帰って天ぷらを持っておいで」
教室に入るとすぐに数学の先生が言った言葉だった。それほど天ぷらをとにかく食べたかったようだった。
「先生、天ぷらは私の家でつくっているのではなく、裏の家でしているのです」

すると先生は私を憎たらしそうに見た。そんなことを言って恥ずかしかったのか、そのまま教室に入って来いと言った。先生たちも食べていくだけの食糧が得られず、あからさまに「食べものをくれ」と言う世の中になってしまった。

秋になると、黄金色になった稲を収穫するために、学生たちがいつも動員される。子どもたちの中には、収穫をするときには、自分のポケットを満たすのに一生懸命になる子がいる。ポケットをいくつも作って盗んでいくのである。首に袋をぶら下げたり、寒くもないのに冬服を着て、ポケットに稲穂をつめこんでいく。

トウモロコシの収穫の時であれば、ベルトにさして隠したりする。
意地悪な子たちは、それらを見つけると、先生に言いつけたりする。

すると先生は、しかるふりをして、トウモロコシをすべて取り上げる。そして最後の日に皆で食べようと言いながら、先生は家に持ち帰ってしまう。
時には、子どもたちに盗みをさせることもあるのだ。そんなことから、私は、先生たちさえこんな生き方をするしかない世の中なのだ、と理解するようになった。

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