生きる方法は脱出のみ [その1]
--------------------------------------------
(文) リ・ドンハク [キルスの伯父・ファヨンの父]
48歳。咸鏡北道花台郡出身。労働党員であったが1999年1月に北朝鮮脱出北朝鮮では製錬所、建設企業所の、副職場長などを務めた。
--------------------------------------------
脱出の何日か前のことであった。私が通っていた企業所職場に所属する副業船(漁船)に乗った同僚と話をする機会があった。
私が彼に、「サケの時期はサケで、イカの時期はイカでもうかるんだろう?」と言うと、彼はこんなことを言った。
「海の出入りを統制する軍隊に渡す分があるし、油代もかかる。船乗りが豚肉を食べる費用がいくら、というようにあれこれ出費が多い。そして初級党秘書や職場の支配人、また他の幹部たちにやる分も少なくないので、漁師といってもたいしてもうからない」
ある夏にはもっとも大きなイカを選んで干したもの、ドラム缶100缶分を初級党秘書に持って行ったこともあったという。
市場では大きくていいイカはドラム缶1本で500~600ウォン、時には700ウォンになることもあった。初級党秘書が運転手を毎日埠頭に行かせるのだが、そのたびに持っていってしまう生イカは、いったいいくらになるのだろう。その量は漁師の手に残る量の何倍にもなるはずである。合計すると何十万ウォンになるはずである。
次のページへ ...
1 2