37 日米当局による米軍機事故現場の共同管理
さらにこの問題をめぐっては、『実務資料』の211~221ページに、1959(昭和34)年7月14日の法務省刑事局長発、検事総長、検事長、検事正あて通達「合衆国軍隊が使用する施設又は区域外における同軍隊航空機の事故現場における措置について」が載っている。
同通達には、1958年10月16日の日米合同委員会で合意された措置が書かれている。在日米軍司令部から指令「航空安全 日本における米軍施設又は区域外の航空機事故」(1958年10月31日)を発し、日本側警察当局もそれに相応する処置をとるという形式で、それぞれ具体的に定めている。
この在日米軍司令部からの指令は、司令官代理の参謀長であるR・R・ヘンドリックス陸軍中将の名で発せられている。その「基本方針」として、こう書かれている。
「合衆国軍用機が日本において合衆国軍隊の使用する施設又は区域外にある公有若しくは私有の財産に墜落又は不時着した場合には、適当な合衆国軍隊の代表者は、必要な救助作業又は合衆国財産の保護を行うため、事前の承認をうることなくしてかかる場所に立ち入ることが許されるものとする。日米両国の当局は、無用の者をかかる事故現場の至近に近寄らせないようにするため、墜落又は不時着の現場に対して必要な共同管理を行うものとする」(『実務資料』p.212 ~213)
この指令でもやはり、「合意事項」第20項と同じように、事故現場に米軍は事前の承認なくして立ち入れるとされており、それが日米合同委員会であらためて確認されているのである。
同指令のなかでさらに注目すべきは、日米当局による事故現場の共同管理に関する日本側の権限についての記述である。
まず、「事故現場への接近制限」という項で、「立入りを制限すべき事故現場及びその制限期間については、日米両国の責任者間において意見の統一を行うものとする」と書かれている。そして、「立入制限地域への立入り」の項で、次のように定めている。
「(1) 一般に、立入制限地域への立入りは、立入る権利と必要のある者にかぎるものとする。
(2) 責任ある日本政府の係官は、合衆国軍隊要員以外の者の立ち入る権利と必要とを決定する。
(3) 責任ある合衆国軍隊の係官は、合衆国軍隊要員(軍人、軍属)の立ち入る権利と必要とを決定する」(『実務資料』p.215)
つまり、立入制限地域への合衆国軍隊要員以外の者すなわち日本人などの立ち入りに関しては、日本側に決定権があり、責任ある日本政府の係官(陸上では所轄警察署長もしくはその指名による警察官、海上では海上保安庁の代表者)が決めるのである。
それに相応する日本側警察当局の処置が、警察庁から警視庁警備部長や道府県警察本部長などあての通達「米軍用機の墜落又は不時着現場における警備措置等について」(1958年11月10日)である。
この通達は、「墜落又は不時着現場は日米両国の責任者によって必要な共同管理を行うこと。特にこの共同管理にあたっては、今後は調査のための証拠保全、機密漏洩の防止等も考慮して事故現場の警備にあたらなければならない」(『実務資料』p.216 )と最初に述べたあと、事故現場の「立入制限区域」に関して、注目すべき重要な規定を記している。
つづく(文中敬称略)
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