死ぬほど殴られ
(文) チャン・キルス
ある日の夜ふけ、2時か3時だっただろうか。
ぼくは逃げ出すことを考えていた。以前ここに来た時に逃げ出した経験があったので、そっとドアを開けてみようと考えた。しかしうまくいかなかった。昼間、指導員が20歳になるチョルホという男に、ドアを見張らせていたのだ。
ぼくはドアをゆっくりと開けてチョルホに便所に行くと言った。彼は早く戻って来いと言った。廊下はとても暗かった。ぼくは壁を伝いながら便所に行った。
便所ではどれだけ探しても、逃げられる穴を見つけることはできなかった。ぼくは部屋に戻りながら、様子をうかがった。チョルホは廊下の床に軍隊の外套を着て横になり、片足をイスにかけていた。ぼくはすばやくドアの横にあったイスを動かして、抜けだせるようにした。
部屋に戻って、寝ているミング兄さんを起こした。
ぼくはミング兄さんに先に逃げろとささやいた。ミング兄さんはそっとドアを開けて、そろりそろりと歩いた。兄さんの足音が少ししたところで、ギィーという音とともにドアを開ける音がした。
「だれだ!」
その音に、チョルホが起きて走ってきた。救護所の職員はすべて起き出してきたが、ミング兄さんは逃げ出した後だった。彼らはぼくらがいる部屋に来て、懐中電灯で中を照らした。ぼくは息を殺して、ドアと反対側に横になり寝たふりをした。救護所は再び静寂につつまれた。
ぼくは、チョルホが再び寝入ったすきをついて逃げ出した。しかし救護所を抜けて、いくらも行かずにつかまってしまった。
「このガキ! お前、死にたいのか」
責任指導員は足で蹴り踏みつけ、拳で殴りつけた。あまりに強く殴られたため、ぼくは息ができなくなり、熱が出た。
長い時間、死ぬほど殴られた。
さらに棍棒で殴りはじめた。ぼくはあまりにも痛くて、泣き声があふれ出た。
「このガキめ! お前のようなやつは、死んでもいいんだ」
指導員は、気がふれたように殴り続けた。
ぼくは少しくらい殴られても痛がりはしない。けれど、あまりにひどく殴られて、両腕の皮膚が破れ血が流れ出した。
「もう一人のガキとは、どこで会おうと約束したんだ」
「約束はしていません」
彼はぼくたちが約束したはずだと殴り続けた。ぼくは血だらけになった。鼻血が噴き出し、腕と足からも血が飛び散った。
他を殴られるのは我慢できたが、棍棒で腕を殴られると、なんと痛いことか、耐えられなかった。あまりにも強く殴られて、内股はふくれあがり、腕はアメのようにねじれて
しまった。指導員はまるで狂った犬のように殴り続けた。
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