密告で再びつかまる
(文) チャン・キルス
数時間過ぎた頃、私服を着た人が部屋を訪ねて来た。そして否応なしにぼくは安全部に連れて行かれてしまった。ぼくはこれで終わりだと思った。
伯父さんのことをよく知っているという人物に騙されたのである。
よく考えてみると、ぼくがアパート4階の部屋で話していたとき、ぼくの話を聞いていたのが、まさに安全員だったのだ。その家の主人が部屋に座っていた人に敬語で話し、腰を低くしている姿を見て、おかしいと思ったときに、早く気づいていなければいけなかったのだ。
彼らはぼくに手錠をかけて、薪で容赦なく殴りはじめた。
「中国で南朝鮮の人間と会わなかったか? 教会に行かなかったか?」
と問い詰め、手を踏みつけながら、蹴とばされた。すぐに頭から血が流れはじめた。気が遠くなり、何も考えられなくなった。
ぼくが捕まったことを知った隣りのおばあさんが、仕方なくぼくが中国から持ってきたお金を安全員に渡した。お金をすべて奪われ、救護所に再び入れられたぼくは、部屋の隅に座って泣きじゃくるしかなかった。お金を手に入れた彼らは、手錠を外し、水を一口飲ませてぼくを落ち着かせようとした。
次の日の朝、安全員はぼくにお使いをさせた。のどが渇いたから二階から水をもってこいと言うのだ。2階に上がったぼくは、水を運ぶ途中に、審問を受けている人に飲ませ、自分でも飲み、空のやかんを持って降りていった。
ぼくは安全員に水はなかったと嘘をついた。
のどが渇いた安全員は、村から水を汲んでこいといった。そして警備哨所も通過させた。
ぼくはこれこそ絶好のチャンスだと思い、やかんを持ったまま逃げ出した。
(つづく)
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