90年代の大飢饉を機に、民衆は非合法の市場経済を活発化させ生き延びた。 写真は元山市のヤミ市場で米を売る女性 98年10月 アン・チョル撮影
90年代の大飢饉を機に、民衆は非合法の市場経済を活発化させ生き延びた。
写真は元山市のヤミ市場で米を売る女性 98年10月 アン・チョル撮影

1月下旬まで朝中国境地帯を取材していた。
筆者がこの地域の取材を始めて17年、訪問回数は70回近くになる。

現状では、北朝鮮の内情を知るためには、監視と規制だらけの北朝鮮国内よりも、朝中国境地帯の方がずっと情報が多く、速く、正確である。
第一次情報である「ヒト」と接触できるからだ。

今回も合法・非合法に中国に出てきた大勢の北朝鮮人と会った。
合法で出て来るのは親戚訪問や貿易業務で来る人たちだ。

デノミ実施後に中国に出てきた人たちへの直接取材と、北朝鮮内部への電話取材を集中して続けてきたが、結論から述べると、現時点の北朝鮮内部の経済状態はこの10年で最悪である。

このまま混乱が続くと2月中に各地で飢饉が起こり、死者が発生する可能性が高い。
中米ハイチでは大地震で20万人の死者が発生し、国連は「史上最悪の人道危機の可能性」と発表したが、北朝鮮の混乱はハイチの事態を上回るかもしれない、と筆者は見ている。

中国朝鮮族の取材協力者が、一月下旬に親戚訪問で咸鏡北道を訪れるというので市場調査を依頼した。
4日間滞在した彼の調べた物価は筆者の取材とほぼ同じだった(連載の1参照)。
内部の印象を彼は次のように語った。
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