【アースマラソンで、イラン横断中の間寛平さん。この日テヘランをあとにした】

テヘランつぶやき日記
大村一朗のテヘランつぶやき日記 ・「寛平ちゃんを見送りに行くで!」 2010/03/18
間寛平さんがテヘランにやって来た。
マラソンとヨットで地球を一周するアースマラソン。日本から太平洋をヨットで横断し、アメリカ、ヨーロッパを走りぬけ、今、イランを横断中なのだ。

2日前にテヘランに到着し、今朝、テヘランを出発するというので、僕は嫁さんと子供を連れて、出発地点のアーザーディー広場へ見送りに出かけた。関西人の嫁さんから、「寛平ちゃんを見送りに行くで!」と、その日も仕事があるというのに、早朝からたたき起こされ、半ば強引に連れ出されたのだ。
イラン正月ノウルーズを3日後に控え、テヘランの西の玄関口アーザーディー広場は、正月休暇のために首都を脱出する車で、朝7時過ぎからすでに渋滞していた。

出発地点にはテヘラン在住の日本人とその家族などが、手作りの日の丸を持って集まっていた。そして出発予定時刻を30分ほど過ぎて、寛平さんとスタッフを乗せた白いバンがやってきた。
車から降りた寛平さんは、我々の少ないながらも熱狂的な出迎えに応え、しばらく記念写真に応じたり、冗談を言って笑わせてくれたりした。

関西ローカルではない僕にとっては、単に芸能人を見ている興奮しかなく、生の「寛平ちゃん」を前にして感極まっている嫁さんに、自分とは違うルーツを感じて少々たじろいでしまう(嫁さんにとって、寛平ちゃんは単なる「芸能人」よりもっと近い存在らしい)。

正直に言えば、僕は今日ここに来ることにあまり乗り気ではなかった。昔、同じような旅をした僕は、なんとなく彼とどう向き合うべきなのか分からなかった。だから、ただ手を振って見送るだけのつもりで、嫁さんに尻を叩かれながらやってきた。
でも、来て良かったと思った。皆の声援を背に、手を振りながら出発してゆく寛平さんのうしろ姿は、ここで生活する僕らにとって、なんだかとてもまぶしかった。そして、吹き去って、決して戻ることのない一陣の風を見送るような切なさも感じた。

十数年前、旅で通過した村々で、異国の青年を家に泊め、もてなし、翌朝、家族総出で見送ってくれた数え切れない人たちのことを、僕は思い出していた。見送る側に立って、初めて彼らの気持ちが少し分かった。
寛平さんと、僕を連れ出してくれた嫁さんに感謝し、アーザディー広場をあとにした。

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