農繁期に突入も食糧供給の混乱続き問題山積
4月中ごろから本格的な農繁期に突入した北朝鮮で、畑が荒らされる事件が頻発していると、5月6日、両江道の内部通信員が伝えてきた。北朝鮮では肥料を混ぜた土を盛ったものにトウモロコシの種を植え、発育を早める「栄養団地」を四月中旬から一斉に作るが、この「栄養団地」や植えたばかりのジャガイモの種イモが掘り返されて盗まれたり、覆いのビニールまで盗まれる事件が跡を絶たないのだという。

農作業に汗を流す咸鏡北道茂山(ムサン)郡の人々。2004年6月 撮影:石丸次郎 cアジアプレス、石丸次郎
農作業に汗を流す咸鏡北道茂山(ムサン)郡の人々。2004年6月 撮影:石丸次郎 cアジアプレス、石丸次郎

 

このため、両江道のある地区で5月2日に住民を集めて行われた人民班の会議では「種イモと「栄養団地」を盗みから守るために配置された保安員(警察)は今後、武器を携帯する」旨が住民に通知された。また「これは中央からの指示である」と重ねて強調されたという。

通信員によると種まきの季節の畑は、保安員たちは懐中電灯を一つ持って警備していた。「種泥棒」はは地元の人間では無く、他地域から盗みにやってくるため、住民たちの間でも警戒が強まっているという。

このように食糧を入手できない人々が飢えをしのぐ最後の手段として、畑にあるトウモロコシの苗やじゃがいもの種イモを盗むことは過去にもあった。90年代後半の「苦難の行軍」と呼ばれた大飢饉当時は全国の畑で「種泥棒」が横行した。

今年になってまた「種泥棒」が頻発している背景には、市場に並んだ食糧を購入する現金を手にできない人々が、昨年のデノミ(通貨ウォンの切り下げ)以降の経済混乱で急増したことがあると思われる。
北朝鮮はでは現在、毎年6、7月にジャガイモ、8月にトウモロコシが収穫されるまでの端境期である「ポリコゲ」を迎え、食糧価格が高い水準で推移している。(李鎮洙)

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