インタビュー 三人の女性が吐露する金正日体制への本音(3)
取材:石丸次郎/整理:リ・ジンス
■インタビュー 1 カンさん 下
「貨幣交換」の目的は何か?
Q:あなたは今回の「貨幣交換」の目的は何だと思いますか? 庶民の生活が大変なことになるのに、なぜ実施したのでしょうか?
カン:国家にお金が無くてやったのではないかと思っています。国家が(国営工場で作った)商品を売ってこそ国に金が入るのに、今は商品が無いので、お金はすべて商売をやる個人に入るようになっているんですよ。
私が考えるに、米ドルや、中国元などの外貨は、国にはなくて、全て個人の手の中あるんです。それを人民たちから強奪しようというのが目的でしょう。
以前から、朝鮮は「通貨膨張」だと言われていました。流通するお金の量が多すぎると。これでは必ず混乱が巻き起こるだろうと噂されていました。
国にお金がないから、国家はひたすらお金を印刷し続けるんですよ。お金の価値はどんどん下がって物価はどんどん上がる。中国のお金なら一元で買える物を、われわれは紙幣一包みを持って行って買う訳です。
朝鮮の物価の基本は中国の物価なんです。朝鮮では自主生産している物がありませんから、朝鮮のお金に価値がない。国家はお金が無いからどんどん印刷していって、社会にお金をばらまいて、それでも収拾がつかなくなったから、「貨幣交換」をやった。私はこのように考えます。
Q:それで人民のお金を没収した。
カン:そうです。人民のお金を取り上げたので、今では国家にもお金が多くなったでしょう。でも、またせっせと印刷するでしょうから、もってもせいぜい二、三年でしょう。同じことの繰り返しです。この後はどうしようというのかしら。
Q:中国元や外貨を持って朝鮮に入って行ったら、税関で定められたレートで換えなければならないという規則がありますよね。
カン:そうやって国家の規定通りのレートで換える人はいませんよ。
Q:年末から外貨も使えなくしたそうじゃないですか。
カン:使えなくしましたけれど、外貨が個人に入ってくることを防ぐことはできませんよ。朝鮮のウォンが中国の元と比べてどれくらいの価値なのか皆知っていますから、中国元の流入を防ぐことはできません。両替はヤミ業者の家に行ってやります。換えるのは簡単。
Q:ヤミの交換レートはどんどん変わっているようですね。
カン:私が中国に来るときには、一元=一六ウォンまで上がっていました。「貨幣交換」が終わった一二月七、八日には一元が六ウォンでした。それが中旬には既に一六ウォンでした。だから今の〇・七ウォンという国定レートでは、あまりに低くて誰も換えませんよ。
(中国元の実勢レートは二〇一〇年二月末現在、一元=九〇縲怦黶Z〇ウォンである)
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