「貨幣交換」の目的は何か？
Ｑ：なぜ今、「貨幣交換」をしたと思いますか？
ケ：私の考えは単純です。国がしんどいから。国にはお金が無いんですよ、工場などの企業所でお金をかき集めても、労働者の給料も払えない状況なんですから。誰も国の銀行を信用しないので貯金もしません。だから銀行にも金がない。「貨幣交換」という無茶なことをしてでも、個人が持っている金をどうにかして吸い上げようというのが国家の目的だったと思います。
Ｑ：国が難関を克服するために人民の財産を強奪するということではないですか？
ケ：（笑）。誰一人として、表立ってそんな意見を述べる人はいません。家の中では「ああ、これからどうしろというのだ」とか、「こんなんじゃ生きていけない」とかぐらいは言いますが、外でそのように話す人はいませんね。
Ｑ：これからどうなると思いますか？
ケ：四人家族の場合、一〇万ウォンを新しい金一〇〇〇ウォンに換えて、家族一人当たり配慮金五〇〇ウォンの四人分が出たわけですから、だいたい二五〇〇ウォンから三〇〇〇ウォンの金が手に入ったわけです。
これは旧い金で三〇万ウォンほどになります。私は、今回の措置で、多くの人の財産は平準化するだろうと思ったんです。本当の金持ちや人民元で財産を持っている人を除けば、どの人も、手元にある金は大体五〇〇〇ウォン未満になったわけです。
しかしこの先は、いかに頭を使ってここからまたのし上がっていくのかが勝負でしょう。限られたお金を上手に活かせなかった人は、また飢えて苦労することになるでしょう。とにかく一旦平らになることはなった。旧正月が明けた頃から、どうやってやり直そうか考えているところです。
Ｑ：どんな人が「貨幣交換」後に有利になるでしょう？
ケ：例えば、「貨幣交換」前に品物を買っておいた人、何かモノを生産できる状況にある人。皆、懸命に頭を使ってなんとか生きていこうとするでしょうね。
Ｑ：結局、得をしたのは、金持ち、中国元を持っている人、そして国家ではないですか？
ケ：その通りです。権力者は利益を得ましたよ。一方の庶民は八〇％ぐらいが被害を受けたんじゃないかな。
Ｑ：北朝鮮には何を持って帰るつもりですか？
ケ：コメは中国の税関で二袋＝五〇キロしか朝鮮に持ち出せないように制限しています。朝鮮側はコメの搬入は問題ないんですが......（注1）。ですから、コメ五〇キロと乾燥麺を多めに持っていきます。乾燥麺は食糧として扱われない加工品ですので多めに持っていくことができます。後は中国元を持って帰るつもりです。
（このインタビュー、終わり）
注１ 中国の穀物輸出規制──農業大国の中国も今では食糧輸入国である。国内の食糧が無秩序に外国に流れて国内の価格が上昇するのを防ぐため、食糧の輸出は、量と時期の「枠」を毎年定めている。北朝鮮への輸出制限もこの「枠」のためであって、核実験に絡む経済制裁のためではない。
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