廃墟と化した巨大コンビナート
錆付いた巨大なパイプラインの群れが人影の見えない敷地の中を這っている。窓枠が取り外され内部がらんどうになった建物。屋根までがどこかにいってしまって、内部が天に晒されているものも数多く見える。
煙も蒸気も上がっていない何十という大小の煙突。敷地の周囲を囲む壁は、あちこちが崩れ落ち、敷地内にはトウモロコシ畑や水田が広がっている。塗装もされずくすんだ色の大きな塔型サイロは、まるで工場の墓場に立つ墓標のようである。
キム記者が撮影してきた順川ビナロン連合企業所(以下、順川ビナロン)の姿は、まるで爆撃を受けて復興ままならぬまま放置された工場群のように見える。
だがもちろん、この巨大コンビナートは空爆の標的になって破壊されたのではない。建てられた時からほとんど動くこともなく放置された後、プラントに設置されていた機械類の多くは他所に運び出されたり、ばらされてスクラップとして売り飛ばされたりしていった。建物の窓ガラスも建材も屋根板も、労働者や近隣の住民によって取り外され持って行かれたのだという。
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