服装、髪型、金日成バッジの有無から自転車に乗ることまで、北朝鮮の民衆はうんざりするような規制の中に生きている。
北朝鮮式社会主義の良俗にかなうかどうか、資本主義の退廃文化に染まっていないか、はたまた指導者の好みと気まぐれによる指示によって、時代錯誤で恣意的な《風紀》の基準が作られてきたのであった。
この北朝鮮独特の風俗風紀の規制は、昨日今日始まったのではなく、六〇、七〇年代から存在していたのだが、この二、三年、取締りが格段に強化され、不便と不自由を強いられる民衆の間から、不満と怨嗟の声が上がっている。 リムジンガンでは、これまで具体的な内部映像や証言を通じて、北朝鮮社会の風俗・風紀の取締りについて何度も報告してきた。その内容を整理すると次のようになる。
◆ リムジンガン1号 茶髪
◆ リムジンガン2号 細身のズボン、厚底サンダル、スタイルコート
◆ リムジンガン3号 チムバズボン(中国の女性が家の中だけで着る、ゆったりとしたズボン)、男子の長髪(スッデモリ)、先の尖った靴、茶髪、女性のストレートの長髪、毛皮服、革ジャンパー
髪型や服装、靴などの他にも、金日成バッジを付けずに外出すれば咎められることはよく知られている。また、南朝鮮(韓国)のドラマ・映画・ポルノなどのCD−R、DVDなどを見たり保有したり、南朝鮮の歌を聴いたり歌ったりすることも取締りの対象であるが、これは風紀の取締りというより敵側の情報を遮断すべしという政治的理由による規制なので、今回は触れない。
二〇〇八年の夏頃から、女性に対する取締りが一層厳しくなり、服装のみならず自転車に乗ることもうるさく規制されるようになったという報告が、北朝鮮内部から数多く寄せられた。
なぜ今、風紀の規制を強め取り締まっているのか、そしてその取締りはどのような組織によって、どんなやり方で行われているのか。内部記者の報告を整理してお伝えする。
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