吹き荒れる《風紀取締り旋風》１

2010.06.28

リ・ジンス

取締り１　女はスカートをはけ　上
取材シム・ウィチョン
シム・ウィチョンは二〇〇八年の夏から秋にかけて黄海南北道を訪れてビデオ取材を敢行したが、彼が撮影した映像には、糾察隊（これについては後日解説する）によるうんざりするような取締りの現場が数多く記録されていた。そのいくつかを紹介したい。

男の糾察隊員が居丈高な物言いで自転車の女性を止めた。（2008年10月海州市　シム・ウィチョン撮影）

〇八年一〇月、黄海南道海州（ヘジュ）市内の大きな交差点で、糾察隊の男女六人が、ズボンをはいて大通りを歩いている中年の女性を取り締まっている。だが、呼びとめられたその女性は、いつもズボンをはいて通っていた道なのに、なぜ今日だけ取り締まるのか、また、他にもズボンをはいて通り過ぎる女性がいるのに、なぜ自分だけを取り締まるのかと、不満を爆発させ糾察隊に食ってかかっている。

女性：ズボンをはいている女性が私だけだっていうの？
糾察隊男性１：全員を捕まえろ、っていうのか？
女性：私のような忙しい人間をなんで捕まえるのよ。
糾察隊女性：あんただけが忙しいっていうの？　することもないような暇な人間に私たちが見えるっていうの!?
女性：じゃあ、なんで他にズボンをはいている人を捕まえないのよ！　普段はこんなに厳しく取り締まることなんてしてないくせに。今日は郊外に出るからズボンをはいて出てきただけなのよ！
糾察隊男性１：大体あんたは肖像輝章（金日成バッジ）も付けずに外出してるじゃないか？
女性：買い物をしに出てきただけよ。
糾察隊女性：誰がそんな作業服で街中に出てきてもいいって言ったのよ？　まったく......。
（つづく）
整理　リ・ジンス