ビルマ最北の家(上)
※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署 名を「宇田有三」に統一します。
カチン州北部のプータオを出て18日目、ようやく最北の村タフンダンに到着する。ちなみにプータオは、民間の飛行機が離発着できるビルマで最も北の町でもある。
標高402mの山間地で、人口は1万人にも満たない。そこはまた、第二次大戦中にビルマに侵攻した日本軍が唯一陥落できなかった町でもある。当時、蒋介石軍への補給道路である「レド公路」を断絶すべく奮闘していた日本軍であったが、さすがに、この最北の町にまで兵力を割く余裕がなかった。
なんとかタフンダン村に入った。
これ以上、歩かなくてもいいんだと思うと、ホッとする。
村全体を見下ろす高台には、黄金に輝くパゴダ(仏塔)が建つ。そのパゴダは、背景の真っ白な雪山と紺碧の空の中へ、まるで平らな地球を逆さまにして落ちていくかのように佇んでいる。
パゴダを見る景観としては申し分ない。だが、その光景には、何か腑に落ちないところがある。どうしてだろうか。
その場に足を止めて、ゆっくりと考える余裕はない。前を行くポーターたちの影を追って小走りになる。そうやって、ようやく丸太で組んだ家に到達した。
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