「ここがビルマの最北の村の、最北の家だよ」」
ウー・テットンがそう説明してくれた。ビルマではこれより北に、人の住む村も家もないんだ。
3cmはあろうか、分厚くしっかりした木製の階段を踏みしめて家に上がり込む。旅装を解くと、どっと疲れがでてきた。
囲炉裏のすぐ傍に敷かれていた啼き鹿(吠え鹿)のふわりとした毛皮の上に横になる。天井が高い。
屋根を覆う葉と壁の横板の間から太陽光線が斜めに差し込んでいる。屋根から1つ電球が、ポンと宙づりになっている。ああ、ここにも電気があるんだな。ちょっと感激する。
どっしりとした高床式の家には、囲炉裏のある部屋が3つ。そのうちの1つは、客間だ。家の中をドンドンと歩き回っても、分厚い板をしっかりと組み合わせている床は、ギシッとも音を立てない。
客間の囲炉裏には、大きな五徳が据えられ、中国製のヤカンが置かれている。薄暗い部屋の中には、壁一面に見慣れないチベットの文様が描かれている。それはまた、ラワン民族の村では全く見られなかった模様であった。
つづく
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