ビルマ最北の家(中)
※お断り ミャンマー(ビルマ)入国取材の安全を期して、宇田有三氏は「大場玲次」のペーネ ームを使用していましたが、民主化の進展に伴い危険がなくなりましたので、APN内の記事の署 名を「宇田有三」に統一します。
私たちを迎えてくれたジャウスーさんは46歳。身長177㎝の私にも負けず劣らずがっしりとした体格だ。
握手をした手は、やはり、ごつい。しかも、ここでも握手をする習慣があるんだな。一つ年上の奥さんサーテェイさん、8歳の息子ツッティアウンス君、7歳の娘リィヨンドンちゃんの3人は、麦畑で雑草取りに勤しんでいる。
家の裏側に回ってみると、真っ白な雪を頂いた山に、もやっとしたガスがかかり始めている。
「あれが、あのカカボラジですか?」
「いいや。カカボラジを見るには、ここからまだ2日ほどかかるよ。あれは別の山、ダンディー山だ」
東南アジアの最高峰であるカカボラジの標高は5881m。この山頂にはじめて立ったのは、実は、ジャウスーさんの弟アンセー(ナンマー・ジャンセン)さんと日本人登山家・尾崎隆さんである。
それは1996年のことであった。尾崎さんのカカボラジ登頂記には、カカボラジ登頂の許可を得る興味深い場面がある。
「その時だった。
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