1.沙里院(サリウォン)市の「闇の卸売り商店街」[3]
2008年10月撮影
取材 シム・ウィチョン 解説 石丸次郎
現在北朝鮮で流通している消費物資の大半は中国製である。かつては日本製品が多かったが、中国が経済発展して生産力をつけ、安価で良質の製品を作れるようになると、衣料品、靴、石鹸や雑貨から、時計、電化製品、自動車、オートバイまで、ありとあらゆる種類の中国産品が北朝鮮になだれ込むようになった。
中国が生産力をつけた九〇年代中盤は、ちょうど北朝鮮社会が金日成主席の死亡をきっかけに発生した大混乱に陥っていた時期と重なる。混乱で生産活動がストップしてしまった北朝鮮国内に、中国産品が大量になだれ込んで市場を席巻する。その後社会混乱から回復した後も、北朝鮮の製造業は良質安価な中国製品に立ちうちできず、今日に至るまで競争に負け続けて立ち直れずにいる。
当初、中国産品は鴨緑江、豆満江の二本の国境の川を合法非合法に越えて北朝鮮に持ち込まれた。当初は、正式の貿易の他にも、国境の住人たちによって、中国からは主に食糧、衣料などの日用品が、北朝鮮から中国へは、日本製の中古車や漢方薬材料や松茸、クズ鉄などが運ばれた。
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