生徒が作った机が学校の固定資産に
リ:なるほど。それで他の地域でも同じように机や椅子が足りないんですか?
先生:恩徳(ウンドク)郡なんかでは転校してきた生徒は、無条件に個人で机と椅子を準備しなければならないと聞きましたよ。

リ:うーむ。私たちが幼かったころはまだ良かったということですね。それにしても近頃は本当に税外負担(注1)が多いですね。あまりに多すぎる気がします。
先生:そうですね、私たちの時代とはずいぶん変わりました。昔も外貨稼ぎのためという名目で、うさぎの皮や金属類を集めたりもしましたが、今のように生徒に食糧を出せという話はありませんでしたからね。たまに先生がひもじい思いをしていればご飯くらい分けてあげたりもしましたが......。

今は生徒たちに余りにも多くの負担を強いているようで、教師をしている者にも心労が絶えません。上からキツく言われますし......。二〇〇三年ころまでは椅子と机の不足問題を解決できない教師は批判を強く受けたんですよ。生徒に対して無条件に「持ってこい!」と言うのでは無く、「国の事情がこうだから止むを得ずにお願いするのです......、どうかよろしく」と言えだとか、そんな話ばかりで......。

そうすると必然的にお金のある家と無い家の差が出てくるんです。机と椅子を合わせた費用一〇〇〇〇ウォンを出せない家の子は、机をいつまでたっても作れない。私がそれを指摘すると学校に来なくなってしまうんですよ。それで、何度も市と道の教育委員会にどうにかしてくれと強く申訴(公式の訴え)しましたが、それもダメで......。とにかく今は、皆なんとか座れているのでほっとしていますが......。

リ:一つ気になることがあるんですが、そうやって生徒が作ってきた椅子と机は卒業するときにちゃんと返してあげるんですか?
先生:一度学校に入ってきたものなので、学校の固定資産として登録されます。

リ:そうすると、結局税外負担ということですよね。
先生:そりゃ、私だってなんとか生徒の負担を減らしたいですよ。子どもたちは学校にお金や物を納めに来ているのではなくて、勉強しに来ているわけですから。
(つづく)

整理 リ・ジンス
注1 朝鮮は「税金のない国」を自称してきた。であるにもかかわらず、無償のはずの学校教育の現場であれこれ持って来いと言われることを、一般に皮肉を込めて「税外負担」と呼ぶようになった。最近ではこの言葉は禁句とされてしまったが、本質が変わらないので民衆の間では使われ続けている。

壁に張られていた体育関連のスローガン。上から「大衆化」「専門化」「生活化」とある。
壁に張られていた体育関連のスローガン。上から「大衆化」「専門化」「生活化」とある。

 

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