取締りに遭遇するとどうなるのか
糾察隊には罰金を課す権限が与えられている。取締りの内容によって違いがあるようだが、〇六年の時点で罰金額は五〇〇ウォン程度。現在はもう少し値上がりしているかもしれない。服装の取締りの場合、軽微な違反に対しては口頭注意で済ませることが多いが、著しい違反とみなされ場合は、服やズボンをその場で切られたり、いったん家に帰されて、違反した服を持ってあらためて出頭させられる。違反した服は、没収されてはさみで切り刻まれたり燃やされてしまうこともあるという。何度も違反を繰り返して悪質だとみなされると、農村での農作業や建設土木工事現場に強制動員される。期間は三日程度から、長いときは一ヶ月にも及ぶという。

「街頭で取締りに遭い、そのまま工事現場に連れて行かれることも珍しくない。家族には、作業着や弁当を準備するようにすぐに連絡が行く」という(前出の〇六年に脱北した男性の証言)。

〇九年六月に清津市から中国に一時的に越境してきた女性(二三歳)は、糾察隊の取締りに遭った人の強制動員の現状を次のように語ってくれた。
「何度も取締りを受けたり、重大な違反とみなされた場合には『突撃隊』と呼ばれる組織に連れて行かれます。今、清津市で糾察隊に摘発されると、漁郎川(オランチョン)の水力発電所工事に連れて行かれます。重労働で事故も多い上にまともに食事も出ないので、『漁郎に行くと死ぬ目に遭う』とみんな言い合っています」
付言すると、糾察隊より厳しい取締り組織として「常務(サンム)」と呼ばれる組織がある。社会主義秩序に反する現象をなくすことを目的に、保安署(警察)、保衛部(情報機関)、検察、中央党の傘下に組織される、いわば取締りのプロ集団だ。構成員は、やはり除隊軍人が多いが主に党員から選りすぐられ、処罰に対するある程度の決定権を与えられている。代表的なものには九二七常務、一〇九常務などがある。九二七常務は、コチェビなどの流浪者を収容する。一〇九常務は外国製のビデオCDなどの不良録画物を取り締まっているという。
(つづく)

吹き荒れる《風紀取締り旋風》1
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