
2010年7月 撮影 アジアプレス
6月後半から7月中旬にかけて朝中国境地帯に行っていた。北朝鮮内部に住む取材パートナーたちと会うこと、中国に脱北して来て間もない越境者・脱北難民とできるだけ多く接触して北朝鮮内部の最新動向を取材することが目的であった。
ところが、今回、その脱北難民に会うのが非常に困難であった。
脱北者の減少傾向は5、6年前からずっと続いていた。
それでも一年前には、探せば一週間で20人ぐらいに接触することは可能だった。
ところが今回は、国境現地のネットワークを動員して探してみたのだが、「最近出てきた人はいない」という返事ばかりなのだ。
北朝鮮は昨年11月に行ったデノミ(通貨単位の切り下げ)による経済の混乱で、一部地域で餓死者まで発生するなど、庶民の生活はこの10年でもっとも苦しい状態だ。
難民を押し出す、北朝鮮内部の「プッシュ要因」は昨年よりずっと大きくなったことは間違いない。それなのに、なぜ脱北者は激減してしまったのだろうか?
理由のひとつ目には、何より北朝鮮の警備強化が挙げられる。
居住地から中国と国境を接する咸鏡北道、両江道、慈江道、平安北道に向かうためには、警察が発給する特別な通行証が必要で、公務や冠婚葬祭など明確な理由がないと発給されない。
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