かくいう私もその一人で、なんとかコネを使って移ろうとしたんです。それなのに、うちの学校の教育部長が地域の校長たちの集まりに出席した時に、私のことを名指しで「絶対に行かせない!」と言って、その話は立ち消えになってしまいました。私はふてくされてその後六ヶ月間学校に行かなかったんですよ(笑)。

リ:はっはっはっ(大笑)。
*  *
このように北朝鮮で大変なのは生徒や親だけではない。教師も生きていくために精一杯なのである。教師としてのプライドも、人並みに食べていければこそ維持される。3号でお伝えしたように、学校に課せられたノルマを果たせなければ、教師に対して罰金が科せられるだけでなく、ひどい場合には処罰を受けることにもなる。

お金のない家の子どもは、学校に「出て来られない」。教師は、学校で教えるだけでは「食べていけない」。学校は、無理にでも生徒や親から収奪しないと「維持できない」。まさにないないづくしである。北朝鮮の教育の未来はどうなってしまうのだろうか。
(おわり)
整理 リ・ジンス
注1 彼女が住んでいる地域における当時の米の相場は、一キロあたり一二〇〇ウォン。二キロの米を買ったら無くなってしまう金額である。
注2 北朝鮮では教育委員会から割り当てられる大学進学票が無ければ大学の入試を受けることができない。それを貰うために学校に袖の下を渡したりするのだが、教育に熱心な親が父兄会で先生のサポートを皆に呼びかけ、進んで実践するのも先生の心象を良くするための手段だという。今の北朝鮮では勉強の実力よりも、親の経済力、政治力が大学進学を決める最も大きな要素となっている。だから貧しい区域では大学進学に関心を低く、必然的に教師への心づけも少なく、収入が少ないのである。

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