(2)「朝鮮の宝」茂山鉱山とは
茂山鉱山は総埋蔵量70億トン、現時点での可採埋蔵量は13億トンとも22億トンともいわれる、世界でも屈指の規模を持つ鉄鉱山だ。300年ほど前から現地の住人により少しずつ開発されてきたが、近代的な再開発が始められたのは、植民地時代の1930年代中ごろ。

当時、戦争遂行のため、鉄の需要が急速に増えていた日本によって整備された。その後、北朝鮮政府の管理下に移ると、1970年代にはスウェーデン製の設備が導入されるなど、重工業の発展を優先する政策の下、「朝鮮の宝」と呼ばれ重点的に開発されてきた。

南坪鎮から臨む茂山郡の全景。奥に見えるのが茂山鉱山。手前の川は国境の川、豆満江。2010年7月 李鎮洙撮影 ©アジアプレス

 

鉱山を運営するのは「茂山鉱山連合企業所」だ。北朝鮮の内閣の金属工業省に所属し、軍需品など国にとって最も重要なものを生産する特級企業所に分類されている。1万人とも3万人とも言われる労働者が働いている。

茂山鉱山での鉄鉱石の生産高は、北朝鮮全土の鉄の流通に影響を及ぼす。採掘された鉄鉱石(原鉱石)はまず砕かれ、それから機械のふるいにかけられる。こうして得られるのが精鉱(鉄鉱粉)だ。原鉱石では25%前後だった鉄の含有量は60~65%程度になっている。その後、この精鉱は清津(チョンジン)市にある、同じく特級企業所かつ北朝鮮最大の製鉄工場である、金策製鉄連合企業所に送られた。

こうして、茂山の原鉱石は鉄になって全国の産業施設に供給されてきた。茂山の精鉱を大量に清津市に輸送するために、1985年には100キロに及ぶパイプラインが設置されたほどだった。
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