(3)中国との間の浮き沈み
茂山鉱山に投資したのは吉林省延辺朝鮮族自治州の延吉市を本拠にする「延辺天池工業貿易有限公司」。2003年3月に設立されたこの会社は同年、茂山鉱山に対し機械の整備など採掘環境を整えるために1億元(約14億円、当時)を投資した。そして同年10月、中国側の和龍県南坪鎮の税関を通じ、鉄鉱粉(精鉱)の輸入を開始した。(※1)

2004年には100万トンの鉄鉱粉を輸入した。順調な取引の背景には8月と11月に代表団を茂山に派遣するなどした吉林省の商務庁の後押しがあったとされる(※2)。鉄鉱粉を北朝鮮から輸入し、中国全土の製鋼所に売却すれば破格の利益を得られ、南坪鎮を管轄する和龍市をはじめ、地域の活性化につながるからだ。

そのため同9月には南坪鎮に3000万元(4億2000万円、当時)を投資し選鉱工場を完成させる。これは慢性的なエネルギー難や施設の老朽化などの理由で、中国の望む精鉱を生産できない茂山鉱山の事情をカバーするためのものだった。北朝鮮から南坪鎮に送られ選鉱工程を経た茂山の鉄鉱粉は、鉄の含有量を68%まで高められることになった。

選鉱工場は今も建設当時と同じ姿のままだ。「延辺天池工業貿易有限公司」の子会社である「延辺天池選鉱有限公司」が運営している。写真は2005年8月のもの。撮影:アジプレス ©アジアプレス
工場の内部の様子。北朝鮮からトラックで運ばれてきた鉄鉱粉が積まれている。2005年8月 撮影:アジアプレス ©アジアプレス

 

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