女性同盟の仕事として、街中の風紀取締りに動員された女性たち。「朝鮮女性の美風を率先して守る」としてチマ・チョゴリを着ている。(2006年10月清津市 リ・ジュン撮影)
女性同盟の仕事として、街中の風紀取締りに動員された女性たち。「朝鮮女性の美風を率先して守る」としてチマ・チョゴリを着ている。(2006年10月清津市 リ・ジュン撮影)

 

北朝鮮という国では、農場員ならば農業勤労者同盟に、労働者は職業総同盟に、児童は朝鮮少年団に、というように、全ての社会構成員は何らかの組織に所属しなければならない。その中でもひと際存在感がある大きな組織は、朝鮮民主女性同盟だ。一般には女性同盟あるいは簡単に女盟と呼ばれている。女盟を構成するのは、家庭の主婦と託児所、幼稚園に勤務する女性たちだ。他に職場を持つ女性たちは職業総同盟に所属し、独身の場合は金日成社会主義青年同盟(青年同盟)に所属する。

近年の北朝鮮社会で、女性の地位が相対的に非常に高くなったことは誰しもが認めることである。この地位は、九〇年代半ばに食糧配給の途絶に直面した際、男が職場を離れてジャンマダン(市場)に出ることが認められなかったため、代わりに女性たちが家計の責任を持つことによって築かれたものである。

女性たちはジャンマダンに出て、血と汗と涙を流して働いて家族を守った。役立たずの男の代わりに女性が大黒柱となって、家庭と社会を支えたのである。その努力と実力を男は認めざるを得なくなった。家庭における女性の発言権は増し、社会においても地位が向上したのである。

さて、その女性の組織の代表である朝鮮民主女性同盟中央委員会委員長の盧成実(ロ・ソンシル)が、二〇〇八年の秋、黄海北道松林(ソンリム)市の女性同盟を指導するために同市を訪問した。松林市に属する全ての洞・里の女性同盟委員長が五柳(オリュ)洞事務所の会議室に集められ、盧委員長からの「特別指示」が伝達された。だが、それは、女性たちを大いに憤慨させる内容であったという。その概略は以下の通りだ。

1 一ヶ月一〇〇ウォンと定められた会費を、下部の組織が無断で水増しして集めることを禁ずる。実態報告の資料によると、松林市の各女性同盟委員会が実際に徴収している会費は、少なくとも一ヶ月当り平均五〇〇ウォンで、最も高い場合は一五〇〇ウォンだという。

2 会員の中で夫を非難したり、舅をぞんざいに扱い虐待するという行為が見られるという。そういうことのないように組織内で生活指導を強化すること。
3 会員の中で市民が餓死したとういう噂を流布する者がいる。仮に周囲でそういう現象が起きていたとしても、決して口外しないよう厳重に取り締まらなければならない。本件は八月一五日に一度告知したが、中央本部より再度厳重に指導するものである。
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