物件1 ある地方大都市の平屋一戸建て
取材 リ・ジュン
次の会話は、二〇〇六年一〇月に金正日政権が核実験を強行した後、リ・ジュンが人々の反応を収集しようと、知り合いのA氏の家に人を集めた時のものである。リ・ジュンはビデオを密かに設置して取材を試みたのだが、政治問題である核実験については、互いに慎重でなかなか話がはずまない。いつしか話題は、住宅の価格に向いて行った。

この場にいたのは、ある地方の大都市の住人たちで、地方政府の中位級の幹部クラスの人間や商売を手広くやっている人たちだ。またA氏の家はアパートではなく平屋の住宅である。

A:私は昨年(二〇〇五年)一二月三一日にこの家に入居しました。
B:居間がもうちょっと小さくてもいいから、部屋が少し大きかったらよかったのにな。

A:どの部屋のこと? 下の部屋ならこれくらいでちょうどいいですよ。
B:いや、上の部屋のこと(注2)。

A:上の部屋ですか。でも家のことであんまり贅沢は言っていられませんよ。
C:周りの家に比べると、そんなにでかい家だとはいえないな。

A:この家は六四平方(メートル)です。あっちの区域に行ってみると、どれも一〇〇平方は超える家ばかりですよ。うちの家ぐらいだと、今なら一三〇〇万ウォンくらいでしょうね。(取材当時一ドル=約二八〇〇ウォン)
B:オイ、そんな高い家を買う奴がいるのか?

A:この前、うちの隣の隣の家のことで、何人かが、どっちが買うのかでもめていましたよ。
B:ここはジャンマダン(市場)が近いから、高いんだろうな。

A:そうですね。値段には位置も関係がありますからね。うちの家くらい手入れしてある家なら一三〇〇万ウォンはするでしょう。
B:一三〇〇万だったら四〇〇〇ドルぐらいか?

A:いや、四〇〇〇ドルまではいかないですね。
C:××区域では二部屋の家が七〇〇〇ドルするんだそうだ。

A:どれくらいの面積ですか?
C:七八平方だって。
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