中国の長吉図プロジェクトに呼応するように、昨年12月に金正日総書記が羅先(ラソン)市を訪問して貿易基地として開発することを指示。2010年の1月に羅先市を北朝鮮で三番目の特別市に昇格させている。

筆者は、中国政府が北朝鮮政府に羅津の門戸を開かせた側面が強いと見ている。中国はこれ以上、北朝鮮の不安定な国情が、中朝国境をはじめ中国に経済的な損失をもたらすのを望まない。吉林省や東北地方の再開発が成功するためにはまず北朝鮮の経済が安定する必要がある。そのための「ウィン-ウィン政策」の目玉として羅津港の活性化を挙げたのだろう。北朝鮮は港湾利用料を受け取るとともに、物流の基地として地域の発展が見込めるし、中国は前述したように吉林省と世界をつなぐ道を手に入れられる。

このような前提の下、中国は予算を執行し、琿春市圏河と対岸の北朝鮮羅先特別市元亭里を結ぶ橋「豆満江大橋」の改築など、豆満江岸で道路、橋梁、税関施設の工事を積極的に進めていると推測される。

2010年6月に補修工事を終えた豆満江大橋。中国琿春市と北朝鮮の羅先特別市を結ぶ。360万元(約5億円)の工事費用は全て琿春市が負担した。2010年7月 撮影:李鎮洙 ©アジアプレス

 

茂山鉱山開発への中国の積極的な関与と中国側の鉄道などのインフラ整備は、は、「長吉図」プロジェクトと軌を一つにして進められていると考えるべきだろう。上記の地図にもある通り、和龍市は「長吉図」プロジェクトにおける延辺朝鮮族自治州の西の入り口として重要な拠点である点も注目される。

つまり、「和坪鉄路」は「茂山鉱山開発」と「長吉図開発先導区」を結ぶ線として位置づけられる。また同時に、両開発計画の背後には、自国の発展のため、北朝鮮の開放を強く求める中国政府の姿勢が共通していると整理できる。
「和坪鉄路」の着工式はいみじくも、「長吉図開発先導区」が国家プロジェクトとして採択された二日後の9月1日に行われた。(つづく)

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