減り続ける北朝鮮の外貨収入
今度は、北朝鮮側の外貨事情の深刻さを見てみよう。ここ数年、外貨を入手できるルートがどんどん減ってきており、身動きが取れなくなってきている。
中でも2008年2月の李明博大統領就任当時から続く、韓国との関係悪化の影響は日増しに大きくなっている。「先核放棄」を求め、圧力を強める李明博政権と真っ向から対立した結果、金大中、盧武鉉両前大統領時代には欠かさず行われていた食糧や肥料の援助が無くなり外貨支出が増大した。
また、2008年7月には金剛山観光に訪れていた韓国人女性を北朝鮮兵士が射殺する事件が起きた。これにより現代グループとの間に行っていた金剛山観光事業も中断、年間2000万ドル近い外貨収入を失った。
さらに、2009年5月に北朝鮮が行った核実験により、武器や嗜好品の取引を禁止する国連安保理決議1874号が採択された。このため北朝鮮の武器輸出は激減、ストックホルム平和問題研究所によれば武器取引による収入の90%が減ったとされる。(※1)
2010年に入っても、3月に韓国軍の哨戒艦「天安」号を沈没させたと見なされたことにより、その報復措置として南北間で行われていたすべての貿易が停まっている状況だ。この結果、北朝鮮側は魚介類の輸出などで得ていた約3億ドルを越える外貨収入を失うことになると、韓国の国策研究所である統一研究院は伝えている。
(※1) 2010年1月23日VOA記事
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