② 茂山住民の暮らしぶりの変化
中国からの投資によって、茂山鉱山の労働者はもとより、茂山地区の住民たちの生活と、その環境がどのように変化していくのかも要注目だ。
アジアプレス取材班が南坪鎮を訪れた今年7月初頭、北朝鮮にいるイム・チョミ通信員が直接茂山郡を訪れ取材を行った。それによると、茂山鉱山の労働者たちへの食糧配給は5月分が、本人にのみ配られ(家族の分は無い)、6月分は配給用のトウモロコシが足りず、本人分すら半分の15日分が、配られただけだったという。
同様に、他の企業に比べ比較的高いとされる給料(月給)も3ヶ月間出ておらず、遅配された過去分の給料も、2000ウォンのみだったとのことだ(7月時点で約180円)。これはジャンマダン(市場)でコメを2キロほど買えば無くなってしまう金額で、労働者たちは大変困っていたという。
また、ジャンマダン(市場)の様子は貨幣交換以前よりも売り場に空席が目立ち、中国から密輸された衣類を除いては商品も少なく、活気に乏しかった、家を失いさまようコチェビたちの姿も多く、正視に絶えない光景だったと伝えてきた。
中国側からは鉄鉱粉の代価が当然支払われているわけだから、現状はそれが労働者や地域に還元されているとは言い難い。むしろ北朝鮮政府が茂山鉱山の資源と労働者を搾取し、不当な利益を得ているという可能性が高いという結論に到達せざるを得ない。
このような状況が他の地域でも同様に起きている可能性がある。環境汚染が発生しているかどうかも含め、中国からの投資が北朝鮮住民の生活にどのような影響を及ぼしているのかに注目する必要がある。
誰がための茂山鉱山か
世界最大級かつ北朝鮮最大の鉄鉱山であるだけでなく、中国との国境地帯にあり外からも動きが伺い知れるため、常にその動向に関心の集まる茂山鉱山だが、その運営の実態把握には限界がある。
茂山鉱山の未来は北朝鮮経済の未来、そして中国による北朝鮮の地下資源投資の未来を左右すると言っても過言ではない。
だからこそ、茂山鉱山で働き、茂山に住む北朝鮮の人々の生活にどのような変化が起きているかに関心を払う必要がある。茂山鉱山は他でもない、北朝鮮の人々の財産であるからだ。
北朝鮮内外のメンバーで構成されるアジアプレス北朝鮮取材班では、今後とも茂山鉱山を追って行きたい。(おわり)
(※1)2010年7月22日RFA記事「香港、大豊グループなど不法行為を注視」(原文韓国語)より引用