シム:これは建て替えたアパートですね。それなら五〇〇万ウォンぐらいになりますかね。五〇〇万ウォンならば......、ええと、ざっと二〇〇〇ドル近いということになりますね。ところで、工事をしている人たちは都市建設部から来ているのですか。
女性:さあ、分かりません。
シム:工事をしている人たちが、自分たちで資材を全部買って建設しているんだろうか? 五階建てだけど、すでに三階までは部屋が埋まっているようですね......。
シム記者が撮影した映像だけでは、この建設中のアパートの広さや位置、普請の程度はよくわからない。だが、工事が未完の建物に入り込んで人が住み始めていることからも、海州市の住宅事情の悪さが思いやられる。
シム記者は、このアパートが既存のものを建て替えていると話しているので、建設主体は国家や国営企業の可能性もある。あるいは、トンチュ(金主)が投資して立て直して「分譲」しているのかもしれない。「工事をしている人たちは都市建設部から来た人か」と尋ねているのはその確認のためだろうが、女性は詳しくは知らないようだ。
完成した状態で一部屋が三~四〇〇〇ドルというのは、日本や韓国の感覚で言えばもちろんあまりに安いが、外貨入手の機会のほとんどない北朝鮮の一般の人々からすると、やはり高嶺の花に違いない。ちなみに、海州市で商売をうまくやっている庶民の一日の稼ぎは、三〇〇〇~五〇〇〇ウォン程度、つまり日収一~一・七ドルくらいである(デノミ前)。
整理 石丸次郎
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