甑山に入れられるまで
シム:あなたは筆舌に尽くし難い苦痛を経験し、今でも席から立つこともできせん。その体験を世界の良心ある人々に知って欲しいと思いますか?
B:私は全世界の人たちに私たちの国の実情を知ってほしいと思います。わが国には教化所、勾留施設がどれだけ多いことか! 人殺しや強盗などの悪い罪を犯した者以外は、(収容されている人たちは)犯罪者などではないんです。
こんな教化所や勾留施設は全部なくすべきです。監獄の中に入ってみると、そこにいるのはほとんどが女性です。皆、食べて生きるために行動した人たちです。とにかくすべて、社会が犯罪を作ったんです。配給をくれてお金があれば、誰も何もしませんよ。私は、本当は(貧しい)社会が犯罪を作り出していると思う。すべては社会が悪い。映画で外国の監獄の様子を見たことがありますが、わが国の監獄生活ほどひどくはなかったです。
シム:あなたは何の罪で捕まって入れられたのですか?
B:私はただ体の悪い人を治療してあげただけです。その行為(医療行為)が罪だというのですよ。
シム:今の朝鮮では、個人が病院に行っても処方だけして薬もくれません、結局、薬は全部個人が買って使っています。それなのに、治療してあげたことが罪になるなんて......。
B:罪の理由は(医師の)資格証がないのに治療したということです。でも、人が夜中にうちの家のドアを叩いて病気を見てくれと頼んで来たら、死にかかっている人を前に置いて知らんぷりはできないではないですか。それが訴えられて、そのために甑山に入りました。
シム:それで逮捕されたんですね?
B:「逮捕」という言葉遣いが本当に耳に障りますよ。×月に捕まって二ヶ月半(保安署の)勾留場に入れられていました。私の場合は人を治療してあげただけで他に何もないから、批判書だけ書きなさいといわれたんです、最初は。
それでも人に罪をかぶせて(教化所へ)送ってこそ、自分たちの星が一つ増えるので(階級が上がる、出世するの意)、保安員は何とかして罪を作り出そうとするんです。あいつらは自分たちでストーリーをあれこれ考えて、それで私は予審(取り調べ)を受けました。結局その間二か月半ぐらい勾留場に入れられましたが、ぞっとするような扱いを受けました。
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