近日中に開催される党代表者会での、金正日総書記の三男、金ジョンウンの処遇に世界の注目が集まっている。朝鮮労働党組織秘書に就任し、父金正日が歩んだ後継コースを踏襲するのか、はたまた秘密のベールを脱ぎ去り、満天下に「顔見せ」を行うのか。
北朝鮮の未来を占う会議の開催を控えた8月末、アジアプレス北朝鮮取材班は中国で労働党幹部とのインタビューに成功した。
李さん(仮名)は50代後半。ある道の党機関の政治部門で働いている。日ごろから農村をはじめ、道内を巡回しながら党中央からの政治的指導を北朝鮮の人々に「講演」するのが仕事だという。そのため、党の方針(上層部)にも人々の暮らし(現場)にも詳しい。
インタビュアーはアジアプレス北朝鮮取材班の朴永民(パク・ヨンミン)記者。インタビューを連載する。
党代表者会の目的は
問:44年ぶりに行われる党代表者会の目的について教えてください。
答:北朝鮮には"後継者"という職責はありません。また金ジョンウンは軍では星4つ、つまり大将の位に就いていますが、党(朝鮮労働党)では何の職権も与えられていません。
そこで、党中央委員会委員など、何か職分を与える必要があるのです。そうすれば、国内的に金ジョンウン大将に全ての党事業を結集させようという意見が出てくるはずです。後継者として推戴するために必要な、制度的な装置といっていいでしょう。
問:それでは党代表者会が終わり次第、金ジョンウンが表舞台に現れると見ていいのでしょうか?
答:表舞台には(すぐには)出てこないと私は思っています。まずは内部でそのような(後継者として推戴する)態勢を整え、外向きには公開しないと予想します。なぜなら金正日将軍の場合も、1973年に推戴された後、1980年の党大会になってようやく表舞台に出てきたからです。そうして地盤を固めて1984年には北朝鮮の全てを自身に集中させ、父である金日成に報告だけするようになっていったのです。金ジョンウンはまだ若いため、党内部でまず職責を受け、党内部の事業を集中させていく手順を経るでしょう。
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